独釣寒江 仲合、同盟会話
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仲合物語
枯れた心
実は私は彼が剣閣に引っ越してきて欲しかった。
陰にまだ敵が隠れているから気をつけたほうがいいと思ったからだ。
竹塢から数歩離れた場所にいるが、茶葉の香りが漂っている。
独釣寒江が退屈な時に茶葉を吸うのが習慣だと夜燭言から聞いたが、絵に描いたような麗しい場所に悠々と暮らしていても何の悩みがあるのだろうか?
考えながら、そっと扉を開けた。
独釣寒江:あなたか。
躊躇っている目が彼の淡然たる視線にぶつかった。頷いて挨拶をした。
無剣:突然で失礼します。お邪魔します。
独釣寒江:構わん。勝手に上がるがいい。
独釣寒江に案内されて、香りが漂う竹塢に入った。
二つの竹の席が玉湖に向かって置かれ、隣に波模様の漆の机があり、その上に陶器の瓶と杯が置かれていた。
席の前に二本の釣り竿がかかっていて、透明な湖水を通して釣り糸の先の重りが見えたが、よく見れば、鉄の釣り針ではなかった。
無剣:待ち合わせ中?
独釣寒江:暇つぶしをしていただけだ。
無剣:ほお?
しかし席と机の様子を見ると、明らかに接客の用意がされていた。
独釣寒江:それは太公望の話がふと思いついたから、宴を設置して真似しようとしただけだ。
私の考えを見破った彼はそう説明した。
無剣:私のことを釣り上げたいのか?
独釣寒江:これはこれは、滅相もない。
机の下の皿に餌があるから、その色鯉たちに餌をあげてくれないか。
無剣:釣りだけが趣味かと思っていた。
この色鯉たちは色とりどりで可愛らしい。二三匹譲ってくれる?
独釣寒江は首を振って、魚の群を指指し言った。
独釣寒江:こいつらは俺が飼っているものじゃない。玉湖が本当の主だ。
欲しいなら、直接聞け。
無剣:ははっ!
独釣寒江:しかし色鯉のためにここに来たんじゃないだろう?
何か用か?
無剣:千隠の陰謀が失敗した以来、木剣の仲間があなたに仕返しすることが心配で、剣閣に誘おうと思った。
独釣寒江:俺はその前やむなく出世したが、今はまた山へ帰ってきたから、奴らは俺に手を出そうと思わない。
無剣:でも今は時世が変わった。横行する魍魎に、頻繁に現れる裂け目。
あなたは武芸がどんなに優れたって、衆寡敵せずに決まっている。
剣塚に移住すると、互いを助け合えるでしょう。
右手で一握りの餌を玉湖にばら撒いた途端、
飄々と泳いでいた色鯉は急に集まって水面を跳ねまくった。
独釣寒江:ありがたい。だが断る。
見る見る餌が食べ尽くされたが、独釣寒江がもう一握りをばら撒いた。
魚たちが一瞬で彼の手の方を取り囲んだ。
無剣:何か心配することでもあるの?
独釣寒江:剣塚は刺客を受け入れてくれるかい?
無剣:花雨のことを知らないか。
独釣寒江:花雨は余儀なく刺客者にさせられたが、俺は自ら命を奪うこの「仕事」を選んだ。
無剣:でももう引退したんじゃないか。
独釣寒江:ふふ、ただの自己満足だ。
血なまぐさい過去は消せない。
無剣:(類は友を呼ぶ。過去のことで仲間はずれにされるのを心配しているか……?)
あなたの昔話を聞きたい。
独釣寒江:これは……
独釣寒江の不思議な表情が水面に映った。
彼が悩んでいる間、色鯉たちはまた餌を探しに私の前に集まってきた。
死生無我
無剣:面白いかどうかは聞く側次第だ。
独釣寒江:そう言われても、遠い記憶が既に曖昧になって、どこから話せばいいか分からない。
あなたが勝手に質問すれば?
無剣:じゃあお言葉に甘えて気になる事を聞きますよ。
独釣寒江:そのウキウキする顔を見るだけで、後悔さが湧いてきた。
無剣:後悔するならチャンスは今だけ。
独釣寒江:武士に二言はない。
無剣:良かった!
じゃあ、独釣寒江は称号だと知ったが……本名は?
独釣寒江:それは教えない。
無剣:ちょっと、約束と違うでしょう!?
独釣寒江:勝手に質問すればいいと言ったが、必ず回答すると約束していなかった。
無剣:ふん、ずるいよ、さすがは刺客だ。
まあいい。じゃあどうして刺客になったか教えてくれる?
独釣寒江:生きるためだ。
無剣:これでいい?
独釣寒江:これでいい。
点蒼山の麓に住んでいた釣り人だったが、小さい頃は山の中に隠居した武人の達人に知り合って、幾つの技を学んだ。
魍魎の災が爆発した後、万物が塗炭の苦しみに陥って、突如世界が一変した。
その時絶命堂はまだ貧弱な組織だったが、千隠が拡張に貪ったから、転々俺の所へ訪ねてきた。
一方俺は生きていくために、居場所を探していた。
そして千隠が機会をくれた。
絶命堂に参加した初日、二つの条件をつけた。
一つ、興味のある目標しか殺さないこと。
二つ、俺と互角できる相手しか目標にしないこと。
俺は殺戮好きでもないし、卑しい手段も使わない。
任務に出発するたびに、目標に告知を出して、対決の期日を知らせる。
決して目標以外の人を巻き込んだり利用したりしない。
時々、誰かが俺を阻止しに来てほしい。
ここまで言って、寒江は苦笑いを漏らした。
独釣寒江:しかし、いまだかつて一度も阻止されたことがない。
俺はなんとなくここまで生きてきた。
五日後、独釣寒江を説得するために重々考えた私はまた竹林の小道に踏み込んだ。
独釣寒江は不器用と言えるぐらい質朴な人だった。
目標に阻止されたい刺客なんて、世の中に彼しかいないかな。
武芸と言えば、独釣寒江は間違いなく身剣合一の域に達した。
彼は冷血でも狂気でもないが、本物の「武器」とも言える。
記憶の欠片を手探りしているころ、突如魍魎の遠吠えが耳にした。
考えせずに竹塢まで駆け抜けた。
独釣寒江は死体の山に囲まれ、静かに血まみれの釣り糸を拭っていた。
今回、釣り竿の先に釣り針がつながっていた。
無剣:怪我してないか?
独釣寒江:魂のない肉塊に傷つくなんてありえない。
無剣:ここは人目につかないとは言え、魍魎が出ないわけない。
やはり私と一緒に剣塚に行こうか。
独釣寒江:俺に力を貸して欲しいか?
無剣:はい。剣塚は剣境の心であり、二度と陥落させない。
独釣寒江:それなら、俺がここに魍魎の群を牽制したほうがいいだろうが。
無剣:貴様、なにを!
独釣寒江:総力を一箇所に結集するより、俺がここに分担させてもらおうか?
魍魎だの木剣だの、俺を殺したいならかかってこい。
無剣:ダメだわ。危険すぎる。
独釣寒江:刺客というものは一人で任務を遂行するのが普通だ。しかもこの竹塢は俺の縄張りでもある。
ここに罠を仕掛けると、一人で魍魎を全滅させるのも可能だ。
無剣:魍魎の体力はきりがない。
逆にあなたが力を尽くしたらどうするつもり?
独釣寒江:何とかなるさ。
無剣:あなた……
お願いだから、もう一度考え直してほしい。
独釣寒江:はは。
それはまた今度で。
死ぬ理由
友人を救うために己の命を惜しまなかった。
任務遂行のために生死を度外視した。
今はまた一人で危険を冒したい。
彼は命を軽んじるまではしないが、死ぬことに抵抗ないのは事実だ。
理由が分からなくても、そのどうでもいい態度に腹が立った。
不本意の殺戮はしていたが、全部彼のせいにするのも不条理だ。
しかし多くの命を奪った独釣寒江は自分の罪を許せない。
絶命堂が廃滅した今、新たな居場所ができて、もう人を殺す必要がないのに、
彼はまだ過去のことに落ち込んでいる。
だが自殺でけりをつけるのも彼の望むところではない。
彼は一体何のために死を求め、何のために生きてきただろうか……
もう一度説得しようと、纏心竹場に向かったが、そこに待っていたのは……
無剣:独釣寒江!?
独釣寒江:……
剣塚からたった数里離れたところに、
思わず独釣寒江が目の前に現れた。満身創痍の姿を見て、心が震えた。
独釣寒江:早く行け。
無剣:……魍魎か?それとも木剣か?
独釣寒江:追う!
無剣:ふん……死にたいか、そう簡単にさせない!
独釣寒江:…!
剣気を発動して、独釣寒江の周りの魍魎を消滅したが、
彼はわざと私を避けているように、また魍魎の群れに切り込んだ。
独釣寒江:あなた一人じゃ殺し切れないんだ。
さっさと剣塚へ帰って仲間を呼べ。俺は一時間しか持ちこたえられないから。
無剣:一時間後は?
独釣寒江:一時間後に援軍が来るだろう。
背中合わせた私たちの周りに、
鮮血が舞い落ちた。突然、その前ずっと悩んでいたことを納得した。
無剣:独釣寒江、 一つ聞きたいことがある。今回は嘘をつかないで。
独釣寒江:分 か り ま し た 。
無剣:一時間後、あなたは死ぬの?
独釣寒江:はい。
真っ赤な血にずぶ濡れた寒江にチラっと笑った。心の中の答えをさらに確信した。
無剣:それじゃ、絶対死なせない。
生きる理由
独釣寒江の体を支えて、一歩一歩と剣塚へ進んだ。髪から滴った血は地面へと落ちて、足跡みたいだった。
後ろに戦闘の響きはまだ絶っていなかった。
翌日の夕方、独釣寒江はやっと目覚めた。
体の傷口は包帯できれいに巻いたが、口元の腫れはまだ消えていなかった。
生きていることを確かめているように、ゆっくり目を開けた。
無剣:目は覚めたか?
独釣寒江は答えずにまた目を閉じた。
無剣:こんなバカなことは二度としないで。
独釣寒江:バカじゃない。
無剣:過去のことで死にたいなんてバカにほかならない。
独釣寒江:……
無剣:自分を殺すことだけで罪を償えると思うか?
無剣:死んでも構わないと考えながら、死に甲斐のあることを探し続けただろう。
しかしそれは間違った。
無剣:命を軽く放り投げるのは無価値だが、魍魎と戦って力尽きで死ぬのも価値があると思わない。
無剣:生きることこそあなたの価値を発揮できる。
独釣寒江:あなたは千万の罪を背負いながら生きている気持ちを分からない。
無剣:でもせめて世界のために、
私のために生きていけるでしょう。
独釣寒江:もう……!
独釣寒江は顰めて、軽く首を振った。
独釣寒江:知っていたか。
無剣:刺客だったあなたが背中を任せてくれたその時から知っていた。
無剣:独釣寒江、私と一緒に生きていこうよ。
無剣:いつか必ず天下泰平の日が来る。その時にまだ死を求めるなら、もう止めたりはしない。
独釣寒江:……うん、約束する。
独釣寒江:これから、この独釣寒江は過去のために死ぬのをやめた。
独釣寒江:あなたのために生きていくと決めた。
同盟会話
○○の独釣寒江:「千変万化」とは千隠の十八番だ。
○○の独釣寒江:普通の変装術とは違い、千隠は声や技すら巧妙に模倣してしまう。
○○の独釣寒江:ただし、千隠の実力を何割か会得できたのは絶命堂の殺し屋ではなかった。
○○の独釣寒江:絶命堂の一軒を終え、自分はもう「寒江の釣り人」の称号にふさわしくないことに気付いた。
○○の独釣寒江:また殺し屋に戻るつもりはないが、今の実力では誰も守れない。
○○の独釣寒江:新たな力を、新たな道を探し出さなければ……
○○の独釣寒江:俺がどういった武器でこの呼び名を獲得したのか?
○○の独釣寒江:ふふ、君が見たこの三つの武器だよ。釣竿、パイプに手裏剣。
○○の独釣寒江:これらが組み合わさると、不意をつける技がいろいろ生まれてきて、対処が難しくなる。
判詞
二句目 一本のヤグラが漕ぎながら遠ざかっていく
三句目 途中で泳ぐ魚が縛られるのを見たが
四句目 船もまた雨雲に追われていた
五句目 線香燃やして服を乾したところ煙が上り
六句目 酒の代わりに雪を一杯煮て飲む
七句目 江湖の険しさを歩んで
八句目 昔の青山がいつか灰となっている
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・「千変万化」とは千隠の十八番だ。
普通の変装術とは違い、千隠は声や技すら巧妙に模倣してしまう。
ただし、千隠の実力を何割か会得できたのは絶命堂の殺し屋ではなかった。
・絶命堂の一軒を終え、自分はもう「寒江の釣り人」の称号にふさわしくないことに気付いた。
また殺し屋に戻るつもりはないが、今の実力では誰も守れない。
新たな力を、新たな道を探し出さなければ……0
削除すると元に戻すことは出来ません。
よろしいですか?
今後表示しない